そばりえ

うんちく

「十割そば」と「二八そば」

そば粉はうどん粉(小麦粉)と違い粘り(グルテン質)が少ないため捏ねるのに技術を要します。そのため、通常はつなぎ(小麦粉)を配合してそばを打ちます。
つなぎを入れずにそば粉だけで打った蕎麦を十割そば又は生粉(きこ)打ち(うち)そばといいます。生蕎麦(きそば)という表現もありますが、現在は乾麺や半生麺との使い分けとして使用されることが多いようです。何回かそば打ちを経験していくうちに十割そばに挑戦してみたくなるものです。高度な技術が必要だと思われるでしょうが、ある程度のそば打ち経験者であれば次の条件が整えば意外とすんなりまとまってくれて十割そばを打つことが可能です。①含水率が適切で保存状態が良い良質な玄蕎麦②丁寧で高い製粉技術よる製粉③挽きたて④丁寧な水廻しで適切な加水率。
挽きぐるみ粉で甘皮他表層部分の含有量が多く色が濃い(暗褐色)程、つなぎなしではまとまりにくくなります。また、製粉方法(石臼、機械(ロール製粉))、そば粉の粒子の大きさ、加水率等により打ち易さに違いが現れます。店主は季節あるいはその日の粉の状態により加水率、つなぎの量を調整し、最良なそばになるよう日々努力されています。

十割そばと二八そば(つなぎ粉2 そば粉8)の味を比べると、計算上では味の濃さに20%分の違いがでるということになりますが、実際に食べ比べてみるとそこまでの違いはないように思います。両者の顕著な違いは味よりも食感に現れます。石臼碾きで十割そばの表面はややざらざらしていて、つるっと喉を通りません。噛んで食べるとソバの粒が感じられ、味や甘みが湧いてきます。それに比べると二八そばはのど越しが良く、食べ易いそばとなります。

一般にそばの好みを話す上で、「そば好き」と「めん好き」とに分けると解りやすいと思います。出雲そばの様な田舎そばは「そば好き」が好み、「めん好き」の人は江戸そばの様なきれのある、のど越しの良いものを好みとする傾向に分かれます。出雲のそば店でもそばの特徴が様々で、食べ歩きするとその違いに驚かれる事でしょう。 十割そばはのど越しを望むより、粗挽きのやや太めのそばを噛んで食べることでそば本来の味を楽しむことに主眼を置くべきでしょう。「そば好き」なかたにお勧めします。 二八そばは二割のつなぎを入れるということで、口当たり、食感を良くするもので、そばの風味がけっして劣るものではありません。「めん好き」なかたはこちらのほうをお勧めします。

十割そばと二八そば。お酒にたとえるなら、米と麹だけで造り上げた濃い味の純米酒が良いのか、醸造アルコールを上手く添加し端麗な口当たりの良い酒に変身したお酒を良しとするのかは好みであることに似ています。