うんちく

大社そば

出雲大社「平成の大遷宮」に合わせて、神門通りの整備が進んでいます。全国から多くの観光客が訪れ、周辺の土産品店、飲食店、そば屋に賑わいが出てきました。まさに「遷宮効果」と言えるでしょう。

出雲大社周辺の約1㎞2範囲内にそば屋は約15件もあります。多くのお店が「手打ちそば」です。大社地区のそばを総称して「大社そば」と名づけ、その特徴を紹介します。

古くから出雲大社の門前町で栄えた町であるため、他所から多勢の参詣客が来るところでした。よって、出雲大社の街道筋や参道近くにそば屋が集中し、参拝客相手に商いをしていたようです。割子そばのルーツは参拝客向けの使い捨ての道中弁当であったという説があります。

「大社そば」の特徴はだしにあります。煮干の「どうめいわし(うるめいわし)」を用いてだしをとるお店が多く、独特の甘い香りがします。よく乾燥させた良質な煮干の苦みやえぐみの原因となる頭やはらわたを丁寧に除いてだしをとれば魚臭くなく上品な味に仕上がります。同じ出雲地方でも松江周辺や奥出雲と比べればだしの濃度が薄くさらっとした感じです。そば猪口でざるそばとして食べるにはこのだしではやや物足りないことでしょう。大社そばは、他の地域のだしより少し多めにかけて食べることをお勧めします。

また、大社では自宅に来客がある時や冠婚葬祭、盆、暮れ、正月等に出前でそばを注文し、もてなす風習があります。来客者にケチったように思われてはいけないと、多めに注文されているようです。しかし、配達中にどうしてもそばが乾燥し、引っ付いてしまいます。時間が経ってからはだしを多めにかけてほぐして食べるのです。だしが薄いのはこのためかもしれません。昔、そばを弁当として食べていた時代もやや薄めのだしだったのではないかと想像します。

肝心のそば切りは、概していえば以前はやや太めで少し軟らかく茹でて食べやすいそばに仕上げているお店が多かったように思います。しかし、麺好きな現代人は「コシのあるそば」を求めるためか、細く硬めのそばに変化してきている老舗も増えました。お店の伝統、コンセプトを守りつつ、お客様の好みの変化、時代の変化に対応していくことは大切です。

私の要望ですが、「大社そば」の一定水準の品質の確保です。観光客に出雲そばは不味い、お店の接客が悪いという印象をもたれないよう関係者の皆様方に精進して頂き、出雲そばによって観光振興・地域おこしに発展するよう願っています。(小村晃一)